【プロフェッショナルトランスレーター対談】絵本で築く素敵な親子関係~大切なことは絵本が教えてくれる~ 聞き手:いとうさゆりさん ゲスト:寺崎しのぶさん

2018/08/07

連載204回目の8月7日号では、絵本翻訳家のいとうさゆりさんが、
自立できる子のキソをつくるヨガと英語のマインドフルネスや、
様々な方向からこどもたちのこころを支援する寺崎しのぶさんをご紹介します。お楽しみ下さい。


<プロフィール>
いとうさゆり:カナダ在住の絵本翻訳家/キッズヨガインストラクター、イギリスのクリスマスの定番絵本『こえだのとうさん』や全米ベストセラー『おやすみヨガ』を翻訳出版。キッズヨガ情報(Happy Kids Yoga)発信中。

寺崎しのぶ:グラフィックデザイナー/ライター/翻訳家、Npo法人おおもり子育て応援隊 理事長、Kids Yoga Tokyo -自立できる子の基礎をつくるこどものヨガとマインドフルネス Founder
オフィシャルサイト:Kids Yoga Yokyo


いとう
『おやすみヨガ』(マリアム・ゲイツ(作)サラ・ジェーン・ヒンダー(絵)いとうさゆり(訳)バベルプレス(刊))の絵本がきっかけで、メールで交流をさせて頂いていましたが、寺崎さんの発信される子どものためのヨガやマインドフルネスに関するメッセージに感銘を受け、ブログやFBなどを拝見させて頂いておりました。寺崎さんの大ファンです! 以前は翻訳業務にも関わっていらしたこと、バンクーバーに住んでいらしたこと、二児の母であること、キッズヨガの講師として活動されていることなど、色々な共通点を感じています。

早速ですが、子どもたちに、ヨガを教えようと思ったきっかけや動機についてお話頂けますか? 

寺 崎
学びを深めることになったきっかけは、娘です。わたしの娘は、朝食を食べるのに30分以上もかかっていました。早寝早起きで、朝も自分で自然と目を覚まして起きてくる。なのに、ずっとぼんやりしてしまう。
せっかく早起きしても、幼稚園のバスに乗り遅れてしまう。このままでは小学校も遅刻がちになってしまうかもしれない。「何がいけないのだろう?」と考えて、はじめは、朝食を娘の大好きなものだけにしてみるとか、
少ない量にしてみるとか。そうした対処療法的なアプローチを試してみたのですが効果がありませんでした。

それで、やはり「原因=ぼんやりしてしまうこと」にアプローチした方がいいのではないかと考えて、いろいろ試したなかで、一番効果があったのが「呼吸あそび」だったんです。元々、ヨガは学んでいたので、そこからヒントを得て、当時4歳だった娘が取り組みやすいように、娘のお気に入りのぬいぐるみを使いながら一緒に呼吸をしてあそびました。

いとう
呼吸あそびとは、面白いですね! 実際には、ぬいぐるみをどのように呼吸あそびに使ったのでしょうか?
改善が見られたのは、親子関係のことでしょうか?

寺 崎
娘のお気に入りのシロクマのパペットを使ってあそびました。仰向けになって呼吸をするとお腹が動きますよね?それに合わせてシロクマのパペットがふわっと浮くように動かしました。

「うわ~」「ふわふわ~」「ぼよ~ん」などと言いながらシロクマが浮くと、娘はおおよろこびで。もっと大きくシロクマを浮かせようと、意識して深く大きく呼吸をするんですね。ときには、脇をコチョコチョして一緒に大笑いしたり、『ペンギンさんの山登り』という手あそびをシロクマにしてあそんだり。

「改善した」というのは、娘の朝ぼんやりしていたのがなくなった、ということです。いつまで経っても目覚めきれない様子だったのが、呼吸あそびをすると、キラキラとした笑顔でいっぱいになったんですね。終わったあとも健やかですっきりとした表情で。朝食の時間も短くなりました。

これが、わたしたち親子のキッズヨガのはじまりで、こどものヨガについての学びを深めるきっかけにもなりました。娘は今でも、朝、ヨガをするのが好きですよ。「朝、ヨガをすると体と頭が気持ちよく目覚めるし、お腹もすいて朝ごはんもおいしいんだよ」と言ってくれます。

いとう
なるほどですね。きっと、意識的に新鮮な酸素を取り込むことで、頭と体がシャキッとすることを感じられたんですね。ヨガを教えるきっかけは、お子さんとの関係性から生まれたものだったとは驚きでした。

寺 崎
わたしはヨガもマインドフルネスも、「教える」スタイルはとっていません。共に学ぶものとして、「こどもたちと一緒に経験し、わかち合う」というスタイルをとっています。なにかきっかけがあって、我が子以外ともヨガをわかち合おうと強く思ったというわけではなかったと思います。

こどものヨガについて学んだことを、こどもたちとの暮らしにとりいれては、自分もこどもたちも、どんどん生きやすくなっていくのを実感していくなかで、自然と起こったことのひとつです。ただ、ヨガでしあわせになることのできる子が、我が子以外にもいるはずだ、という想いはありました。

いとう
「教える」のではなく「共に学び、分かち合う」ですね。私は、以前、年上である自分が「正しい」という気持ちが大きかったのですが、ヨガを学ぶにつれ、またヨガを子どもたちと一緒に楽しむことで、自分の考えの狭さに気がつきました。

実際、子どもから学ぶことが本当にたくさんあって、一人の人間として成長させてもらっていると感じます。ヨガの教えで、寺崎さんが最も伝えたいことは、どんなことでしょうか?

寺 崎
ほんとうですね。毎回、こどもたちから学ばせていただいている、という気持ちになります。

最も伝えたいことはAhimsaになると思います。Ahimsaは「生きとし生けるすべてのものへのいたわり」ですよね? ですから、「自分も、まわりの人も、地球や環境も大切にしながら、ありのままの自分で生きていく」というクラスのコンセプトと通じる部分がとてもおおきいのです。
#Ahimsaとは 日本語では非暴力と説明されますが寺崎さんは、暴力しない=やさしく、やわらかくと考えております。

いとう
自分も他者もいたわる…本当に大切なことですね。自分をいたわることは、本来、一番重要なことなのに、自分のことは後回し、なんてお母さんに、実は最も必要なメッセージだったりしますね。

実際には、どのようなクラスを開催されているのですか?

寺 崎
『キッズヨガ』『英語のキッズヨガ』『発達障害児のキッズヨガ・親子ヨガ』の三つのクラスを開催しています。『キッズヨガ』は基本的には英語を使いません。『英語のキッズヨガ』では、そのときのこどもたちの様子に応じて英語と日本語の割合を変えながらバイリンガルで進めていきます。『発達障害児のキッズヨガ・親子ヨガ』は、その時のリクエストに応じていますが英語をとりいれることが多いです。

『キッズヨガ』がオーソドックスなこどもためのヨガクラスで、手あそびや体を動かすときに日本の童謡や昔話などをとりいれたりしています。『英語のキッズヨガ』はそこに英語をとりいれたものなので、基本的にはおなじですが、歌や絵本は日本のものを英語にアレンジするのではなく英語のものを使います。

また、英語の場合は、ポーズの途中でフォニックスを意識できるように工夫をしています。たとえば、ヘビのポーズをとりながら”snake”の[s]のsoundで呼吸をするとか。

いとう
クラスの特徴がよく分かりました。各クラス共通の狙いはあるのでしょうか?

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<プロフィール>
いとうさゆり:カナダ在住の絵本翻訳家/キッズヨガインストラクター、イギリスのクリスマスの定番絵本『こえだのとうさん』や全米ベストセラー『おやすみヨガ』を翻訳出版。キッズヨガ情報(Happy Kids Yoga)発信中。

寺崎しのぶ:グラフィックデザイナー/ライター/翻訳家、Npo法人おおもり子育て応援隊 理事長、Kids Yoga Tokyo -自立できる子の基礎をつくるこどものヨガとマインドフルネス Founder
オフィシャルサイト:Kids Yoga Yokyo


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